Fast Radius、デジタル製造の熱交換器で性能を2倍に

熱交換器は産業革命の頃から存在し、温冷熱を伴うほとんど全ての工業用途に用いられています(例:冷蔵庫、炉、エアコンシステム、交通、石油精製所、商業環境、病院)。Carbonデジタル製造プラットフォームによる設計の自由や高耐熱材料を利用して、CarbonプロダクションネットワークパートナーのFast Radiusは、熱交換器の昔ながらのデザインを根本的に変え、エネルギー効率アップ、軽量化、低コストを実現し、そのパフォーマンスを2倍にしました。

 

背景

熱交換器は、通常は機械の一部を流れる流体の様に、1か所から別の場所に熱を移動させることにより機能するものです。典型的なものは個々の金属部品で構成、組み立てられているため、余分な手間やコストがかかります。直角、直線、積み重ねで構成される、シンプルな長方形の構造であり、概ね伝統的な工法で簡単に製造されています。但し、限られたスペースで熱交換を最大限行うのに最適な形状にはなっていません。これらの真っ直ぐで、スムーズな経路は、曲がりくねったものと比べると、一般的に熱伝達の効率は低くなります。あいにく、曲がりくねった経路のコストは従来の製造工法では法外なものとなります。

 

伝統的な製造を超えて

Fast Radius 最高科学責任者 Bill Kingが率いたイリノイ大学での研究プロジェクトにおいて、Carbonプラットフォームを用いたデジタル製造が、効率向上、軽量化、低コストを実現しつつ、これまでにない効果的な熱交換器を作る鍵だと判明しました。このプロジェクトは、新しい(流体を制御する)マニホールドをCarbonの高耐熱材料 シアン酸エステル(CE 221)で製作することに成功しました(図1)。混合構造の熱交換器は、低温の流体をより効率的に用い、高温プレートから熱を取り除きます。

 

「Carbonプラットフォームのようなデジタル製造技術で可能となった新しい形状を活用して、あらゆる種類の機械や装置で大幅な進展があるでしょう。我々の調査結果を世界中のエンジニアが新技術を活用することにより、熱伝達の向上を達成する手助けとなります。」

Bill King
Fast Radius 最高科学責任者

 

図1:曲がりくねったテープ混合器による新しい熱交換器デザインプラットフォームとCE221で製作

 

デジタル製造された熱交換器はエネルギー効率とシステムパフォーマンスの両面において利点を実証しています。デザインの自由度が高まったことにより、少量の流体で熱伝達量を2倍にする様々な形状の熱交換器を作ることができました(図2)。混合器を直接流路に形成し、加熱されたプレートに取り付けることができたため、組立費と人件費を大幅に削減することができました。同様の望ましいパフォーマンスを必要としつつ、装置サイズを最小限に抑える必要がある用途で、Carbonプラットフォームならではのフレキシブルでカスタイマイズ可能な特性により、熱交換器のサイズを簡単に縮小できます。

 

図 2:長方形の経路を有する異なる形状の熱交換器:
スタティックミキサー(上)、ねじりテープミキサー(中)、シェブロンミキサー (下)

 

熱交換器のグローバル需要は2020年までに781.6億ドルに到達すると予測されており、この研究は熱伝達パフォーマンスの向上がエンジニアや製造業全体にとって革命的であることを示しています。