重要なポイント:
- Paragonは、Carbon RPU 70とCarbon DLS™技術を使用してPeakyshielderの設計と生産を行い、労働者が既存の帽子を利用して耐久性があり快適なフェイスシールドを作成できるようにしました。
- Carbon DLS™技術を使用して、Paragonは3つあったクリップの部品を1つに統合し組み立てコストを削減しました。
- Paragonは、数日で5回の設計修正を行い、Peakyshielderの市場投入までの時間を短縮しました。
英国が2020年3月にロックダウンしたとき、政府は急速に広がるSARS-CoV-2(コロナウイルス)からの防護に関するガイダンスを迅速に提供しました。特に医療従事者にとってフェイスシールドは、ウイルス感染に対する最前線での最も一般的な防護方式の1つでした。一方、有効である反面、従来のフェイスシールドは、特に長時間着用した場合はしばしば不快さをもたらします。その結果、医療業界以外の多くの労働者はこれを着用していませんでした。
IT専門家であり起業家でもあるDuncan Hutchinsonは、快適さを向上させ、既存の労働者のユニフォームに調和するように設計された非医療用フェイスシールドの作成にチャンスを見出しました。 Hutchinsonは、英国を拠点とし幅広い市場でワールドクラスの試作および製造ソリューションを提供するParagon Rapid Technologies Ltdと提携し、仕事だけでなくレジャーでも快適でスタイリッシュなフェイスシールドであるPeakyshielderの開発を開始しました。
労働者の防護を助ける機会
Peakyshielderは生産ラインの労働者、サービス業および小売業の接客スタッフ、またフェイスマスクを着用できない個人含め幅広く訴求するために、そのデザインは長期使用に適したものである必要がありました。多くの労働者は、仕事ですでにヘッドギアを着用しているため、従来のフェイスシールドを使用できません。生産ラインの労働者は通常、強化された頭蓋骨カバーと短いつばを持つバンプキャップを着用します。小売およびレジャー業界の多くの最前線のスタッフは、ユニフォームの一部として野球帽またはサンバイザーを着用しています。 HutchinsonとParagonは、さまざまな帽子で機能するフェイスシールドを設計する必要があることを知ったのです。
Carbonで市場投入までの時間を短縮
Paragonは、従来の野球帽、サンバイザー、バンプキャップのつばに、成形されたPETシートを取り付けてフェイスシールドを作成できる、1対のクリップで構成されるPeakyshielderのコンセプトデザインをすばやく開発しました。クリップのプロトタイプは等方性を備え、丈夫で軽量、そして生体適合性のある3Dプリント材料であり、ABSに相当するCarbon RPU 70を使用して作成されました。加えて労働者は洗浄剤や消毒剤に触れるため、これらの化学物質に耐えるRPU 70の性能は、このプロジェクトにとって理想的というのがもう1つの理由でした。
フェイスマスクの代替品がいろいろと登場してくるにつれて、Peakyshielderを迅速に市場に投入し、コスト効率と短中期生産の両立を実現することが、確実に製品を成功させるために重要でした。そのためにParagonはCarbon Digital Light Synthesis™(DLS™)3Dプリント技術を使用して、クリップの製造プロセスの金型作成サイクルを排除し、開発フェーズを短縮してコストを削減したのです。
Carbon DLS™技術を使用することによりParagonは金型を不要とし、射出成形などの従来の製造方法に比べて明らかな強みを生み出しました。 Paragonは英国で最大のCarbonプリンタによる造形能力を保有しており、設計から生産までの全プロセスを社内で対応しました。
より良い部品をより速く作成する
Peakyshielderクリップの最初の試作品は、着用者が帽子を外さなくてもバイザーを上下に開閉できるようにする3つの部品で構成されていました。しかしParagonは、このコンセプトには2つの重大な欠点があることに気づきました。まず、クリップには組み立てが必要でしたが、顧客にとってそれは魅力的でなく、製造コストを増加させます。また、デザインを作成するために必要な多大な材料コストはPeakyshielderの価格を押し上げ、従来のフェイスマスクに対する競争力を失います。
Carbon DLS™技術を使用すると、従来は複数の部品を成形してから1つの部品に組み立てる必要があったような複雑な形状の作成が可能となります。Carbonを使用して、Paragonのデザイナーはクリップのデザインを簡素化し、より小さく堅牢な単一部品を作成しました。これによってプリントあたりの最大部品数を増加させ、生産効率を向上させました。
ParagonはCarbon DLS™技術を使用して、数日でPeakyshielderの5回の設計改良を行うことができました。バンプキャップの帽体部分は野球帽よりも短くて分厚くなりがちなため、ParagonはPeakyshielderクリップをバンプキャップのサイドパネルに取り付けるようにデザインしました。野球帽とバイザー用のセカンドバージョンのPeakyshielderを作成するために、ParagonはクリップのPETシールド挿入溝の深さと角度を調整して、野球帽とサンバイザーのつばにしっかりと取り付けられるようにしました。 Paragonが2つのバージョンのデザインを最終化させると、PeakyshielderクリップはCarbon RPU 70を使用しCarbon DLS™技術で生産されました。
多くの利点を備えたフェイスシールドソリューション
英国で製造されたPeakyshielderには、従来のフェイスシールドに比べていくつかの利点があります。超軽量で人間工学に基づいた構造のPeakyshielderは、優れた視認性と快適性を備えた確実なフィット感を提供します。このフェイスシールドはアイウェアにも簡単にフィットし、標準的なフェイスマスクと一緒に使用するとさらに強力な防護を実現することができます。最後に、Peakyshielderは不注意による顔への接触から着用者を防護するためにも役立ちます。 Peakyshielderをテストした作業者は、Peakyshielderがモダンで堅牢であり、洗浄が簡単で再利用可能なクリップであることを高く評価しています。
Carbon M2プリンタでPeakyshielderのクリップを作成すると、ビルドプラットフォームに部品をネスト状に緊密に配置することにより、Paragonは生産時間とスループットを最適化することができました。生産用にデザインされたCarbon DLS™技術によりParagonは、金型作成や設計改良に追加費用をかけることなく、試作から量産に移行することができました。